1998年福岡県生まれ。高校入学を機に一眼レフカメラを購入し写真を始める。大学入学から本格的に活動をはじめ、学生生活の傍ら九州各地の風景を追い求める。国内外のフォトコンテストで受賞歴多数。2019年東京カメラ部10選に選出される。
高校入学を機に一眼レフカメラを購入し撮影活動を開始。大学入学後は本格的に風景写真の撮影をはじめ、国内外のフォトコンテストで多くの受賞歴を持つ佐藤悠大さん。風景写真を追求すると決めた時点でセンサーのダイナミックレンジこそが大切、という観点からD610からD810へ乗り換え、日頃から高画素機での撮影に親しんでいる。繊細な画質差にこだわる風景写真家の視点からZ 7II、Zマウントレンズはどう映るのかを伺った。
カメラに求めることは、とにかくダイナミックレンジの広さです。レンズは解像感と逆光耐性を重要視していますね。風景写真は太陽をフレームインして逆光で撮ることも多いので、これらは大切な要素だと思います。Zシリーズは発売時からチェックしていましたが、Z 7では初めてのフルサイズミラーレスということで様子を見ていました。Z 7IIはラインノイズの解消やダイナミックレンジの広さも申し分なく、とても使ってみたいと思っていたので、今回のモニターは楽しみにしていました。やはり軽さや機動力は武器になりますね。D810と手ブレ補正搭載のレンズだと重量2キロは超えるので、手持ちスナップ感覚で撮るのは厳しかったですが、Z 7IIならばそのような撮り方もできます。わたしに新たな楽しさを教えてくれました。
大分県豊後高田市真玉海岸です。太陽と黒い砂というコントラストが高い状況でも、十分なディテールを残してくれていました。特に砂はRAWのデータでは真っ暗でしたが、持ち上げると砂の粒まで残っており、ダイナミックレンジの広さは期待通りでしたね。またNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sの性能の高さに驚きました。ここまでの逆光でもフレアが出ないのです。従来であれば、レンズの前に指をかざしてハレ切りしたカットと、していないカットを撮っておき、後から合成する必要がありました。1ショットで済むのはとてもありがたいです。
こちらもNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sで撮影していますが、切り取りたい部分は70mmの焦点距離では足りず、最初からトリミングをすることを念頭に置いて撮影しました。おそらく1/4〜1/8くらいにトリミングしていますが、それでもA3のプリント程度であれば問題ないレベルで、高画素機の強みを感じた1枚です。D810もISO64の画質が素晴らしく、センサーだけであれば同レベルかと思いますが、Fマウントの同一焦点距離のレンズよりZマウントレンズのほうが高性能で、レンズの違いも含めるとZ 7IIに軍配が上がるという感覚です。NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sもですが、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sは特に素晴らしく、周辺部まで圧倒的な解像感です。
日没後の真玉海岸です。グラデーションが美しく、三脚を使って撮影しています。右下は相当に暗かったのですが、ダイナミックレンジが広いため、編集することで階調が美しく出てくれました。情報が背面液晶モニターに表示されていると緻密なフレーミングができないので、このときは表示を全て消す「非表示モード」にしています。ボタンひとつで非表示になるのは、風景写真を撮るうえではとてもありがたいです。水準器やヒストグラムなどまで表示させていると、とても情報量が多くなってきてしまいますから。D810にはなかった、ホワイトバランス「自然光オート」の恩恵を感じられた1枚でもあります。ホワイトバランスを太陽光にしていると、どうしても日没後は色に違和感を感じますが、自然光オートでは目で見た色に近く表現されます。現像時のデータも使いやすかったので、ほとんどの場面で自然光オートを適用していましたね。
阿蘇で撮影しています。火山性の山の荒々しい光景が斜光を浴びることで映えていて、立体感に目を奪われて撮影しました。枯れ草が生えているのですが、拡大してみてもディテールが出ていています。
阿蘇の米塚の夕景です。逆光で暗めでしたが、それでも米塚の存在感は十分に出ており、こちらもダイナミックレンジの広さを感じさせてくれる1枚でした。三脚は使っているものの、構図を組み立てるまでは手持ちで撮り場所を探しているので、ミラー機よりも機動力は上がったのは間違いないです。自然光オートがこのシチュエーションでもうまく働いています。空の色味を出すのが難しい時間帯だと思いますが、現像時にわずかにマゼンタに振った程度です。
阿蘇の草千里が浜で撮影した天の川です。この写真を撮ったときに、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sの圧倒的な光学性能に驚愕しました。画面の周辺でも星が肥大化せずに点像されており、このレンズ1本あれば、超広角は単焦点レンズを使う必要はないと感じましたね。いま思い出しても鳥肌が立ちます。そのくらい描写に感動しました。シャッタースピードは20秒ですが、長秒時ノイズもD810より軽減していると思います。
夜明けで、かなり気温が下がったため氷が張っています。超広角だと周辺部の画質は悪化し、像が伸びたように描写されることもありますが、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sは周辺を拡大しても歪みがないうえ、中心部と遜色ないというレベルで解像しています。
こちらも水面に張った氷です。PLフィルターを使うことで、このように玉虫色に撮ることができます。わたしの使っているPLフィルターは径が大きくレンズには装着できないので、手でかざして使用したのですが、Z 7IIのコンパクトさとボディ内手ブレ補正のおかげで撮ることができました。これまでは撮れなかったような写真かもしれません。三脚使用時は手ブレ補正をOFFにしますから、手ブレ補正のON/OFFはすぐにできるよう、カスタムボタンに登録しています。
大分県の野倉の里・ミツマタの森で撮影しました。群生するミツマタに杉の木の影が伸びていて美しいなと思いシャッターを切りました。少しやわらかさを感じるような写真も撮ることができます。ちなみに撮影は基本的には絞り優先AEを使っていて、ヒストグラムを確認しながら白飛びを起こさないように露出補正で合わせにいっています。
桜が見ごろを迎えたため、Z 7IIにNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sを付けて舞鶴公園に向かい、手持ちで撮影しました。ミラー機はサイズ的にも重量的にも持ち出すのが億劫になりますが、この組み合わせは本当に手軽で、撮影の範囲を広げてくれそうだと感じました。これまでは撮影に行く、と決めたときにしかカメラは持ち出さないタイプで、スナップを本格的におこなったのは初めてかもしれません。また、このような日常の切り取りのようなアート写真は、スクエアフォーマットのほうが似合うように感じ、トリミングをしてみました。
もはやOVF以上に美しいEVF、ミラー機にも劣らないバッテリー、D810にはなかったSnapBridgeの便利さなど、細かい部分での良さも感じましたし、三脚に据えてライブビューに切り替えて撮影する、というミラー機の撮影ルーチンから離れることができる点も楽しかったです。なにより風景写真においてもっとも大切なダイナミックレンジと解像感を得られるのは、Z 7IIとZマウントレンズの組み合わせだと痛感しました。風景を撮る方にとって、最高の解はニコン。僕もホームである九州の雄大な景色をニコンで追いかけていきたいと思っています。
有効画素数4574万画素の裏面照射型ニコンFXフォーマットCMOSセンサーによる広いダイナミックレンジと圧倒的な高画質、レンズ設計の高い自由度を活かした大口径Zマウントレンズによる解像感と高い逆光耐性。風景写真に求められる画作りの基準を大きく引き上げる最上画質を得ることができる。さらに、自然光下で最適なホワイトバランスが得られる自然光オート、解像感を損なわない回折補正、5.0段分のボディ内センサーシフト方式VR、高い防塵・防滴性など、フィールドでの風景撮影に大きなアドバンテージを生む数々の機能を搭載。