1999年生まれ。群馬県高崎市出身。幼い頃より、山登りやキャンプなどを通して、多くの自然と触れ合いながら育つ。中学2年生の時に、4年間貯めたお金で一眼レフカメラを購入。自転車で年間6000kmほど駆け回り、野鳥を追いかける日々を送っていた。高校卒業後、北海道知床半島に移住。北こぶしresortで働きながら、知床周辺の野生動物、風景の撮影を行っている。同ホテルで写真展「つながりゆくもの」を開催。
「Z 6」の高い描写力を継承しながら、新たにデュアル EXPEED 6を搭載したフルサイズミラーレスカメラ「Z 6II」。処理速度の向上とバッファー容量のアップにより高速連写性能が向上し、AF/AE追従で約14コマ/秒、最大124コマまでの連続撮影が可能になった。
北の大地の美しさに魅了され知床に移住し、ホテルに勤務しながら北海道の野生動物や風景を撮影している高橋海斗さんは、初めて買ったカメラから一貫してニコンの一眼レフを使い続け、今回のZ 6IIで初めてミラーレスを手にした。Z 6IIのインプレッション、そして野生動物撮影におけるメリットを伺った。
私が初めてカメラを手にしたのは中学校2年生のときで、4年間貯めたお金でD7100を手に入れました。その後、D850へと移行し、レンズはAF-S NIKKOR 600mm f/4E FL ED VRを愛用しています。野生動物の撮影ではファインダー表示のタイムラグ、素早く動く被写体の歪みなどが指摘されていたので、これまでミラーレスを主力にするということは考えていなかったのですが、今回モニターをしてみてそれは思い込みだったと気付かされました。Z 6IIは小さくて軽いのにしっかりとした作りのカメラで、到着したときから触ることそのものにワクワクしましたし、サブ機としてはもちろん、望遠レンズ群が充実してくればメイン機として導入したいと思うほど意識が変わりました。
今回は職場も家もある知床周辺で撮影しています。こちらは朝方の知床。奥に知床連山が見えています。いつもは600mmのレンズを愛用しているのでどうしても動物をメインに捉えることになり、600mmで撮った被写体に寄り気味の写真になっていきますが、今回はNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sをお借りして撮影しており、いつもよりも引きの画を撮ることができました。景色の中の動物を撮るのはおもしろかったですし、開放F2.8で被写界深度は浅いため、風景の中にいる動物であっても際立たせられる点に驚きました。シャッタースピードは1/60秒、焦点距離は200mm。強力なボディー内手ブレ補正が付いているので、安心して手持ち撮影ができましたね。
Z 6IIの14コマ/秒の高速連写を使い撮影したオオワシです。野鳥の撮影などでも14コマの連写は十分なレベルだと思います。連写をしてもXQDカードは高速のため、バッファを使い切ることもなく、スムーズに撮影できました。やはり高速な記録メディア対応で、なおかつダブルスロットというのは安心感があります。シャッターチャンスの直後に再びシャッターチャンスがやってくるのが動物写真だったりしますから。
2450万画素ということで高画素機ではありませんが、画素数でははかることができない立体感や奥行き感を感じました。まるで映画のワンシーンのような存在感。センサーはもちろん、大口径Zレンズの性能のよさもあると思います。カメラは小さいのにマウント口径は大きいので不思議な感じですよね。表現力という点では普段のメイン機D850を超えている感覚を持ちました。
オオワシが飛び立った瞬間を狙いました。猛禽類は飛ぶ前に糞をすることが多く、それまではカメラを構えずに構えていて、尻尾を上げるなどもぞもぞと動き始めたらカメラを構えてスタンバイします。EVFと液晶モニターのどちらも使いましたが、危惧していたタイムラグは感じられず、この写真のように飛び立った瞬間からシャッターを押しはじめてもまったく問題ありませんでした。連写をしており、羽の形が美しいものをセレクトしています。
こちらはトリッキーな1枚で、実は天地逆にしています。写っている鹿は水面の映り込み。本物は敢えて黒つぶれさせているので、ほぼ見えないと思います。
こちらが天地逆にしていないバージョンです。露出の決定は常にマニュアルですが、EVFと液晶モニターに露出設定が反映されるためイメージしやすいですね。ダイヤルを回しながら、この露出で撮りたいというところでシャッターを切る感覚。一眼レフの場合、撮影後に確認して再度の露出調整が必要だったので、そのロスがなくなりました。そして、やはり普段の600mmの場合、もっと鹿だけをクローズアップしていたと思うので、70-200mmを併用するのは新たな視点となるのでいいですよね。そのときに、小型のZ 6IIを採用するというのはベストかもしれません。
僕の写真は動物を探されがちですが、写っていないです、風景写真です(笑)。実はこれ、三脚を使っていなくて、手すりのようにところに乗せて撮っているのですが、手ブレ補正が強力なので0.4秒のシャッタースピードでもブレていません。動物を撮影する中、ふと風景を撮りたくなるときでも、美しく残すことができます。これまではカメラを向けなかったような被写体も気軽に撮れて、そして美しい写真になるのは素晴らしいことですよね。
トラッキングAFを使い撮影しています。逆光でしたが鳥だけを捕捉し続け、ピントが背後に抜けることはありませんでした。今回提出した写真の多くはトリミングをしていますが、個展で大型パネルにするなどの用途でなければ問題ないデータサイズではないでしょうか。
逆光ですが、迷うことなくすぐにピントが合いました。通常時はそこまでD850などとAF性能に違いは感じませんでしたが、逆光や暗所においてAFの進化・強さを感じました。
この撮影時に、暗所でのAFの強さを特に実感しました。かなりの暗さの中で撮った写真です。ISO3200でシャッタースピード1秒。肉眼だと見えないくらいでしたが、Z 6IIはしっかりとモモンガを捉えてくれました。手ブレもしますし、近づくとモモンガが逃げてしまうので、Wi-Fi接続し、スマホのSnapBridgeアプリを使いリモート撮影しています。写真の仕上げはLightroomを使いトリミング調整、シャドウとハイライトの調整などをおこないます。ISO3200での撮影でもノイズは感じられませんし、シャドウもしっかりと持ち上がりました。
ちょっと世代の古いカメラで撮ってしまうと、ここまで階調は出なかったと思いますね。逆光で陰になっている鹿の色がここまで出ているということは、カメラのダイナミックレンジの広さあってこそだと思います。
こちらもZ 6IIのよさが活かされたと思っています。撮影場所は車から数時間歩かないといけない場所。トレッキングがてらZ 6IIを持っていったのですが、それは小型・軽量だからこそできたことだと思います。レンズはこの写真のみNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sです。そして肉眼では暗くて見えないレベルで、光学ファインダーだと構図を決められなかったはず。EVFの恩恵を強く感じましたね。
今回お借りしていたのは11〜12月。気温は−5〜−10度くらいでしたが、カメラの動作は問題ありませんでしたし、バッテリーもほとんど交換した記憶がないくらい持ちました。メイン機とするには600mmレンズの登場が待たれますが、動物に警戒感を与えずにすむサイレントシャッター、暗所でのAF精度やEVFなど多くのメリットもあります。そして、何より撮影の幅が拡がりますね。D850はリュックにしまい込むと取り出すのが億劫になっていましたが、Z 6IIは持ち歩きが苦じゃないですし、スッと取り出すことができます。現状でも、Z 6IIに70-200mmを併用するという使い方を導入したくて仕方ありません。最新機種を持つ楽しみ、メカにこだわった機材を手にする喜びもあり、本当にZ 6IIは楽しいカメラでした。
有効画素数2450万画素の裏面照射型ニコンFXフォーマットCMOSセンサー搭載、イメージセンサーシフト方式の5軸手ブレ補正、273点のAFフォーカスポイント、最高感度ISO51200の高感度性能など、前機種Z6の高い基本性能に加え、画像処理エンジンEXPEED6を2基搭載することで処理スピードが向上。約14コマ/秒、最大124コマの高速連続撮影を実現している。Quad VGA有機ELパネルを採用したことで、連写時でも光学ファインダーに迫る視認性を確保しているほか、瞳AF/動物AFのワイドエリアAF対応、CFexpress(Type B)/XQDとUHS-II規格SDカードのダブルスロットを搭載するなど、あらゆる点でユーザビリティが向上ており、一瞬が勝負の野生動物の撮影との親和性も高い。