新潟県上越市在住。地元の棚田の美しさに惹かれ、総合病院で内科医として働く傍ら、2016年から風景写真を撮り始める。その土地に対する想いと独自性を大切にしている。
新潟県をメインフィールドに風景写真を撮影している石田卓士さん。これまではD850をメイン機に据えてきたが、今回のZ 7モニターを経てメイン機を変更。現在はZ 7を2台体制で撮影しているという。風景写真撮影にあたり、どこに惹かれ主力機に据えるに至ったのかを伺った。
D850とZ 7は画素数が、4575万画素で同等だと聞いています。D850で満足をしていたので正直最初は注目していなかったのですが、実際に使ってみたところ大変気に入りまして、モニター期間終了と同時に購入することを最初の撮影の時点で決めていたくらいでした(笑)。その最大の理由は、私の撮影スタイルにマッチする操作性です。例えば構図を決めるとき、これまではまずファインダーを覗いて構図を調整し、ライブビューに切り替えて拡大表示してピント合わせをするという流れでした。しかしZ 7では、メニューまでファインダーに表示されるので、全ての操作がファインダーを覗きながらできるんですよね。背面液晶モニターを見るときは、メガネを外さないと見えづらいという二度手間からも開放されました。
画質にも差はあると感じています。画素数は同等ですが最新の画像処理エンジンEXPEED 6を搭載していること、ミラーレス構造であること、また口径が大きなZマウントレンズの余裕のある設計が寄与しているのだと思います。FマウントとZマウントの標準ズームレンズとで撮り比べたところ、発色の深さやノイズの少なさなどに差が出るのです。たしかに、このマウント径とフランジバックとで同じ写りをするわけはありませんよね。これからZマウントの時代になるのだなと感じました。風景写真はプリントをしたときに良さが出るジャンルだと思っていますから、やはり高画素機であることは重要です。システムの大きさや重さについては、D850時代は特に気にしていませんでしたが、Z 7を使うと改めて小型軽量であることは武器だと思い知らされました。ただ、動体撮影においてはD850に優位性がありますね。ですから、D850も手元には残しています。
まず、単焦点レンズで星を撮ってみよう、というテーマを自分の中で設けました。これはNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sで撮影しています。ISO1600まで上げてみましたが、EXPEED 6の恩恵なのかノイズは処理をほぼしなくていいレベルしか出現せず、とても満足のいく描写をしてくれました。暗い場所での撮影では、EVFのライブビューが明るく見えてしまうため暗いアンダー露出の写真を撮りがち。この写真もまさにアンダー露出でしたが、現像時に持ち上げても階調豊かで解像感も損なわれることはありませんでした。
続いてNIKKOR Z 35mm f/1.8 Sを使ってみました。撮影時の状況や現像時に感じたことは1枚目と同じ。細かいところまで描写され、シャドウ部を持ち上げてもキレイでした。D850と大きな差は感じておらず、こう写るだろうな、という想像通りでしたが、心持ち色彩にメリハリがあり、ともすれば光害まで拾ってしまうかなというレベル。そして暗い場所での手探りでの撮影がやりやすいですね。Z 7はボタン位置がバラけていて、一度場所を覚えればどのボタンなのか間違えないんです。ボタンの数が少ないため操作性が悪いように思われがちですが、私は良いと感じました。
長野市の善光寺です。真正面から撮影する人は多いので少し斜めから撮ってみました。普段はあまり建物を撮りませんが、とても良く描写するという感想です。これはNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sのワイド端で撮っていますが、標準ズームレンズの実力を見ようという狙いがありました。提灯の明かりの部分と暗い部分とでかなりの明暗差がありましたが、アンダー目に撮ることで美しい仕上げに持っていけます。普段はレンズの歪曲収差補正をかけますが、今回は全てオフにしています。それでも歪みが気にならないのは、マウント径が大きくなったことでレンズ設計に余裕があるからかもしれません。
明け方の霧ヶ峰。富士山が見える場所からの撮影です。実は70-200mmの望遠ズームが最も好みで、こういうシーンでも、もっと部分的に切り取りたくなる性分。しかし、今回はNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sと2本の単焦点レンズを使ったので、本来の私の構図とはかなり異なる部分があります。おそらく、いつもであれば富士山を中心にもっと切り取り、ここまで空は入れないと思います。しかし、画角の制約があったためにこのような美しい空が残せたので良かったなと。現像はまず雲を基準にホワイトバランスを調整するのが私のセオリーです。続いて、空の色を意識しますね。私は近所の棚田を撮影したことで風景写真の楽しさに気付きましたが、そのときから雲が大好きです。ホワイトバランスの基準が雲なのもそれが理由ですし、快晴で雲がない日よりも、表情豊かな雲がある日のほうが撮影したいという気持ちは盛り上がります。
続いても霧ヶ峰。ダイヤモンドダストが出てくれました。望遠ズームでダイヤモンドダストを切り取りたくなるところを、グッと堪えてNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sで撮影しています。この日は多くの方が撮影していましたが、みなさん望遠ズームを使っていたので、私のように広く撮影している写真は貴重かもしれません(笑)。逆光下での描写はD850よりも優れていると感じました。シャドウ部を立ち上げたときの階調の残り方がキレイ。やはり少しアンダー目に撮っておくのがいいかなと思っています。
家から30分ほどの距離にある使われなくなった港で撮影しています。NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sでもう少し何かを撮ろうと考えたとき、前ボケと奥行きのある写真を撮りたいと思い訪れました。スナップ的な撮影も軽快という印象。F2.8で撮りましたが、木の質感や立体感なども良く描写され、メリハリのある画となりました。
新潟県の小千谷で毎年開催されている熱気球の大会です。発色は申し分なし。イメージ通りに撮れました。これは知人との話で僕も気付かされたことなのですが、Z 7の青はD850の青と比べて深みがあるんです。このような順光の青空はもちろん、夜水面に映り込んだ濃い青などもキレイに出るという印象を持っています。
新潟県は冬に花火大会が多く開催されています。この写真は大きな丸い花火と低い位置の黄色い花火の2枚を比較明合成で重ねています。普段からこういうことをしているのではなく、たまたま2枚撮影していたので合成してみました。私は花火をよく撮る方ですが、レリーズは使いません。D850も同様なのですが、背面液晶モニターはタッチシャッターに対応していて、触ったときでなく指をモニターから離したときにシャッターが切れるというモードがあり、花火の撮影にはとても便利なんです。シャッターモードを「タイム」にしておけば、モニターに触れて指を離した瞬間から次に触れるまで露光してくれます。D850の場合は構図をファインダーで決めてライブビューに切り替えて、という手順が必要ですが、Z 7の場合EVFを覗けば自動で切り替わるので設定変更の手間がありません。レリーズケーブルを使うのも物理的に邪魔ですし、花火は次々と打ち上げられるため動作は少ないほうが有利。私のようにタッチシャッターを多用する撮影スタイルであれば、Z 7はとても快適に感じられるはずです。
風景写真の撮影を楽しんでいらっしゃる方にはZ 7は素晴らしい1台になると思います。高画素機のD850と同等かそれ以上の画質を誇るうえ、操作性に優れるという強みがあります。風景はゆっくりと流れているように思われがちですが、雲の動きなど、瞬間を捉えなければいけないという側面もあり、操作にもたつくことがないカメラを使うことは、それだけでアドバンテージ。そして、風景撮影に欠かせないタフさも十分です。あらゆる面で、カメラの未来はニコンZにあるという感想を持ちました。
有効画素数4575万画素の裏面照射型ニコンFXフォーマットCMOSセンサー、最新の画像処理エンジンEXPEED 6が大口径を誇る最新設計Zマウントレンズの性能を最大限に活かし、隅々まで解像感がありノイズの少ない夜景写真撮影を可能にする。操作性にこだわったボタン&ダイヤルレイアウト、防塵・防滴のタフネスボディが夜間での長時間撮影も快適にサポート。風景の一瞬の美しさを逃さない。