夜景飛行機の撮影にはいくつかの見せ方がある。この写真は、伊丹空港北端にひろがる宝塚の夜景を出来るだけ大きく取り込み、夜のきらめきを美しく出すことを狙って撮影した。この場所で撮影すると、多くの場合、飛行機を主題にして誘導灯を写真奥側へと配置する構図が選ばれる。しかし、 F値5.6まで絞ることで、独特のきらめきの有る光芒をできるだけ平行感が出るように配置。後ろになだらかに広がる宝塚の夜景へとつながる構図を撮ることで、画面全体に光が満ちている印象を作り出すことを狙った。
1976年生まれ。滋賀、京都を中心に、関西各地の風景を撮影している。その中でも、人と自然、両者のせめぎ合いが作り出す風景を好んで撮影する。そのため、自然の姿そのものよりも、寺社や仏閣などの古い建築物や、あるいは高層ビルや飛行機といった「人間の作り出したもの」を自然との共存の中で捉えることを好む。
伊丹空港の定番構図をP900で撮影したらどうなるのだろう、と思って撮影してみたが、期待以上の一枚に仕上がった。完璧に停止している飛行機を、滑走路のきらめきの中に配置するこの構図は、すでに様々な写真家によって撮影されている。しかし、通常フルサイズに高額なレンズで撮影される飛行機写真に、肉薄する解像感が得られている。写真のポイントは、右エンジンから動体右側への誘導灯の光の反射と、鉄の解像感がどれだけ再現されているかという部分。撮影時刻は夜21時という、ほぼ真っ暗闇の中で撮影されたにもかかわらず、ギリギリまで光を取り込むことで、光と鉄の質感がしっかりと映しだされている。
飛行機写真に多くの人々が魅せられる理由の一つは、それが旅に直結しているからだろう。旅は人々の人生を大きく変える契機になり、思い出の中の大きな位置を占めるようになる。伊丹空港の南端を走る千里川に人々が集まるのは、飛行機の姿に自分たちが残してきた過去や、あるいはこれから見るかもしれない未来を見つけられるような、そういう気持ちになるからかもしれない。休日は朝から晩まで、多くの人で賑わう人々を飛行機と一緒に撮影するのもまた、この地での撮影の魅力だろう。この写真は、今まさに滑走路に入ろうとしてターンし始めた飛行機と、それを静かに眺めるカップルとの対比を出したかった写真だ。構図はできるだけ安定的に見えるように柵を通常より多めに入れて平行の持つ安定感を利用している。カップルはまったく動かない。飛行機だけが今まさに回転中。その静かな動感をP900の連写で取り込んだ中の一枚。
伊丹空港といえば南端からの写真がその大半を占めている。南側からは色んな写真が撮れるのだが、北端からの写真は最低でも1000mmクラスの望遠がないと写真にならない距離があるからだろう。これまでは、ほぼこの構図は断念していたが、P900の光学83倍ズームという驚異的な望遠の力によって、撮影可能になった一枚。この写真は35mm換算で1000mmの写真。ビル群をかいくぐり、滑走路に向かって一気に侵入してくる飛行機が、素晴らしい解像感を伴って捉えられている。AF任せで手持ちで撮影しているにもかかわらず、飛行機はしっかり捉えられている。陽炎でぼやけた中に、引き締まった白のJAL機が入ってくる対比が素晴らしいと思い、撮影した。
伊丹空港北端から、これまでは不可能だった距離を、P900の光学ズームを利用し、換算距離は1800mmで撮影した一枚。P900にとっても限界に近い距離にも関わらず、夕陽の反射が作り出している光と影の柔らかいコントラスト、窓に写るパイロットの姿、そしてエンジンや主翼一つ一つの質感が捉えられている点など、手持ちで撮った写真とは思えない一枚に仕上がっている。1/250というシャッター速度で1800mmの写真を撮ると、普通はブレの影響が大きいはずなのだが、P900の手ブレ補正の優秀さが見られる一枚でもある。陽炎による背後のビル群がぼやけている様子が、飛行機の解像感との対比になり、掲載候補にあげた。
着陸する飛行機の撮影は、正面からの場合はAFの立体的な食いつき性能が問題になる。斜めや横からの場合は、超高速で飛び込んでくる飛行機を、適切にフレームに入れ込む技術が必要になる。しかし、P900の場合は、望遠状態でもワンタッチでズームバック出来るので、高速で動く被写体を捉え直すことが出来る。それが活きた一枚。飛行機に滑走路の模様が、反射しているところを上手いタイミングで、フレーム中央で取り込むことが出来た。
飛行機撮影の花形の一つは、やはり流し撮りだろう。高速で動く飛行機にピントを合わせながら、どこまでAFが追従していけるのかをP900でも試してみた。AFは動体追従のACTIVEモードにて、1/40で撮影している。問題なく追従していくAFに驚きを感じた一枚。背後の空港や滑走路が一方向に適切にブレることによって、飛行機の速さが強調されている。
流し撮りのチャレンジをさらに一段難しくして撮影した一枚。近接から飛び上がろうとする飛行機を、1/15で追ってみた。シャッター速度は動体を撮影するにはかなり遅い状態で、レンズの距離は35mm換算で220mmという望遠領域に入っているが、飛行機の文字や模様、尾翼の汚れまでが捉えられている。小さいボディながらAFの追従性は良好で、動体撮影も十分こなせることがわかった。
P900の場合は、2000mm相当、光学83倍ズームを全面に押し出したボディだけあって、望遠域における解像感にも隙がない。この写真は1200mmという超望遠域に入りつつある遠さで撮影しているが、主翼の下に隠れてシャドウになっているタイヤまで、潰れずに描写されている。これまでの無数の飛行機が作り出した滑走路のタイヤ痕は、ピント面の部分を中心に、一つ一つの形さえ見えそうな程だ。加えて、AFは飛行機に当てて撮影したが、斜度がまったくない正面からの撮影で、奥から手前に高速で迫ってくる白い機体という、カメラにとっては一番AFが合いづらいものでもピントはちゃんと合焦しているのも驚きだ。滑走路奥は陽炎の影響でボケているが、飛行機の解像感との対比を感じられると思う。
手持ち流し撮りの極限に挑んでみようと思い、P900がその無茶な試みに応えてくれた一枚。設定は150mmで1/3という、ほとんど無謀とも言える設定。AFはACTIVE追従のオート状態で撮影している。流石にこのくらいの厳しい設定になると、フルサイズのフラグシップモデルでさえ失敗写真を量産するレベルだが、P900は限界の撮影条件でも付いてきてくれている。少しぶれているのは撮影者の技術不足で、もしちゃんと水平に動く三脚を使って撮影していたら、おそらくはこの夜の滑走路でもP900はちゃんとした画を流し撮りでも出してくれるだろうと思わせるに十分な一枚に仕上がった。
この写真も、限界を試してみようという試みで撮られた一枚。当日の空気の状態は、霞がかった靄状態で、決して良好とは言えない。撮影ポイントからビル群までは距離はおよそ15キロ。P900の光学ズームを駆使して、ビル群の中に飛び込んでくる飛行機を撮影する試みだ。超望遠に加えて、林立するビルの窓の微細な直線パターンの入り乱れる中で、どれくらい飛行機がちゃんと写るのかと期待して撮影してみたが、小型機の姿をきっちりと捉えてくれている。劣悪とも言えるこの気候と距離の条件でも、面白い作品を撮ることが出来た。