釧路湿原の冬の風物詩である「SL冬の湿原号」。下り方面始発駅の標茶(しべちゃ)を発車してしばらくすると、撮影ポイントとして知られたルルラン踏切りという場所にさしかかります。釧路方面に向かう「逆向き運転」のちょっと珍しい姿。冬枯れの林を抜けてきたところを、焦点距離約600mm(35mm換算)で撮影。吹き上げる煙、丸窓から前方を見る機関士の真剣な表情、機関車表面のリベットや連結部のバネ、チェーンなどの細部もしっかり描写されています。
東京カメラ部10選2014/東京カメラ部2014、2013コンテスト入賞。自然や鉄道が織りなすドラマ、静と動のダイナミズムを活写することを心がけて撮っています。高校生時代に祖父からフィルム機を譲ってもらって以来のNikonユーザー。Nature's Best Photography Japan 2014年度グランプリ、National Geographic Daily Dozen, Editor's Favorite, contest gallery pick up、SIGMA Photo Contest2015 優秀賞、Nikon「山のある風景写真」フォトコンテスト2015 優秀賞、Pashadelic富士山フォトコンテスト2015入選 他
1月上旬、真冬の富良野線を走る車両。断続的に吹雪く天候のなか、美瑛・深山峠展望台から下ったところにある踏切り近くで撮影しました。富良野方面から美瑛に向かって奥の上りカーブを走り抜けて顔を出した車両を、約260mm(35mm換算)の望遠で撮影。車輪に巻き上げられるパウダースノー、ディーゼル排気のゆらぎなど、厳冬の空気感を捉えることができています。撮影したときは気温マイナス10度。列車が来るまでの間しばらく外気にさらして待機していましたが、そのような厳しい条件下でもスムーズに撮影できる信頼性を感じました。
美瑛駅を発車し、雪煙をあげて美馬牛方面に向かう列車。こちらも焦点距離は約260mm(35mm換算)にセットし、圧縮効果で奥の雪山が迫ってくる構図にしました。前景の除雪された雪山のボケ感も綺麗で、美瑛のパウダースノーの質感も感じられると思います。日没後、あたりが薄暗くなった時間帯でしたが、雪煙にかすむ車体、左手前の小屋のトタンの錆具合、信号機や木々に積もった雪など、細かな部分も描写できており、冬の夕暮れの空気感が表現できていると思います。
俯瞰できる場所を探して、地元の友人の案内で静岡市駿河区の持船白跡近くの小高い丘へ。初めてだと登り口を見逃してしまいそうな場所です。ここでは、新幹線の長大な編成全体を入れたいと思ったので縦構図で撮っています。上部には静岡中心部も見え、写真の画角の右外には駿河湾も見渡せる絶景ポイント。戦国時代の要衝とのことで、今川、武田、徳川氏がここを巡って激しい奪い合いを演じたそうですが、いまはすっかり長閑な場所。ここでは下り方面へと疾走する新幹線を撮影しましたが、ちょうどトップスピードに乗るあたりのようで物凄いスピードで走り抜けていきます。列車先頭の鼻先が画角下端の好みの位置におさまるまで、何度か撮ったなかの一枚。被写体ぶれを回避できるよう、やや早めのシャッタースピードで撮っています。
架線と線路が交錯する複雑な造形のなかで迫力ある構図で撮りたいと考え、品川駅のホームから撮影。焦点距離約400(35mm換算)で撮っています。駅のホームでは三脚は使用できないこともあり手持ちでの撮影ですが、最大で5段分のVRが効いてほとんど手ブレなしで撮影できています。レールを留めるリベットの数々、びっしりと並ぶ枕木、車両の窓枠の凝集感など、400mm相当の超望遠ならではの迫力が出ていると思います。超望遠撮影を軽々と片手ででもできてしまう利便性は、この機種ならではの特徴と言えるとおもいました。
全長1,209mにもなる巨大なトラス橋で有名な利根川橋梁。そこを走り抜けて、姿を消す直前の常磐線を撮っています。光学83倍、35mm換算で焦点距離2,000mm相当にセットしてファインダーを覗いたところ、冬の夕方にもかかわらず大気のゆらぎが見えました。そこで、鉄道のホームで三脚は使えないため手すりで簡易固定し、陽炎でゆらぐ1.3kmあまり先の列車と大気の状態を何とかおさえてみたいと思い、悪条件下であえて撮ってみたカットです。そのためややピントが甘めですが、5段分の強力なVRのお陰で2,000mm相当でも手持ち撮影ができることに驚きました。超遠の圧縮効果のために、1.2kmの鉄橋もぎゅっと圧縮され、新鮮な視覚効果も得られていると思います。
釧路?網走を結ぶ釧網本線。釧路に近い「遠矢」駅近くの歩道橋上から俯瞰で撮影しています。釧路湿原を走り抜け、踏切り手前のカーブを通過し、直線に乗ったときにシャッターを切っています。焦点距離は35mm換算で約400mm。この時は超望遠を装備した総重量4kg超の一眼レフ機とP900の2台を使用して撮影していましたが、瞬時に超望遠撮影ができてしまうP900の手軽さには舌を巻きました。車体の細部、冬草の一本一本、電柱の留め具やリベットなど、細部まで描写され、透明感のある画質もみていただきたいと思いました。
釧網本線・塘路駅を発車して、標茶(しべちゃ)方面に向かうSL冬の湿原号。列車を牽引するのはC11型蒸気機関車。焦点距離952mm相当(35mm換算)での撮影です。冬のSL運行は年々減ってしまい、雪景色の中でのSLの勇姿を見ることができるのは、いまではここ釧網本線の冬の湿原号くらいになってしまいました。撮影チャンスは運転期間中の1日2回。上下1往復の運転のみです。塘路駅発車の際に発する汽笛が釧路湿原に響き渡ると撮影スタンバイの合図。列車の接近と共に、蒸気を排出する際に出るブラスト音が次第に大きくなってくると鼓動も高鳴ります。SLまでの距離は約500mありますが、952mmの超望遠ズームのおかげで、蒸気による空気のゆらぎも捉え、迫力ある勇姿を撮影できていると思います。
SL冬の湿原号、下り方面運転の始発駅・標茶(しべちゃ)駅での転回作業時に撮影しています。C11-171型蒸気機関車は、なんと1940年の製造。整備のご苦労も多々と推察されるなかで、76歳にして現役運行されているわけです。運転席まわりにフォーカスして撮影していますが、70数年の風雪を耐え抜いてきた鋼板のうねり、ドア部の細かな凸凹、表面についた汚れやススの細部までをP900は撮しとっています。それは、まさに開拓の歴史を物語っているように感じました。焦点距離は約240mm(35mm換算)で手持ち撮影ですが、強力なVRのおかげでブレなしで撮影できています。また、直射日光が上からさしてくる明暗差の大きな条件下でしたが、空の階調を残しつつも、運転席内部の様子までもが見えるように、暗部から明部まで階調性豊かに撮影できる撮像センサを搭載していることがわかります。
SL冬の湿原号、C11-171型の勇姿を正面から捉えたカットです。人気のある撮影ポイントではありませんが、混雑を避けてゆっくり撮影準備ができる好きな場所です。茅沼駅を出た上り列車が原生林を越えて視線の先に現れると緩やかな登り坂にさしかかります。長い直線を喘ぐように接近してくる姿を、ほぼ独り占め。当初は立ち昇る煙を入れるて撮るつもりでしたが、画角一杯に機体を入れようと咄嗟に切り替えて焦点距離は952mm(35mm換算)で撮影しています。前方の丸窓から見える機関士、機体細部の構造物、蒸気と機関から発せれらる熱による空気のゆらぎなど、細かな部分までが描写されています。
釧網本線・茅沼駅。ここはタンチョウが飛来する駅としても知られています。SL冬の湿原号のシンボルマークもタンチョウ。両者を一緒に撮れればと思い、この場所へ来ました。人気の撮影スポットで、多くのカメラマンで賑わうところです。できれば飛翔しているタンチョウとSLを撮りたいと思っていましたが、そうは簡単にいきません。SLの汽笛にも動じることなく雪原で寛ぐタンチョウと、発車の瞬間の列車を撮影。焦点距離は約500mm(35mm換算)。P900は被写界深度が深い機体のため、手前のタンチョウと奥の列車、駅ホームの掲示物など、広範囲にわたってピントが合っていることがわかります。